世界恐慌は,1929年にアメリカで株価が暴落したことをきっかけに起きた世界的な不景気(不況)です。当時アメリカは世界経済の中心であったため,アメリカが不景気になると,アメリカと経済的な関係があった世界中の資本主義国にも大きな影響を与え,世界的な不景気となりました。
世界恐慌が起きたいきさつとアメリカの対応についてまとめておきます。参考にしてください。
■背景
アメリカは第一次世界大戦で戦場とならなかったため,ヨーロッパなどへの輸出を増やし,第一次世界大戦後,世界経済の中心となりました。しかし,やがてヨーロッパの経済は復調したためアメリカの輸出量は減少,生産過剰となり製品が大量に売れ残り,経済の不安が広がりました。
■株価大暴落
1929年10月24日,アメリカの株式市場で株価が大暴落し,アメリカはいっきに不景気となりました。銀行や工場が倒産し,農産物の価格も下落,多数の失業者が出ました。
■世界のほかの国への影響
アメリカは,第一次世界大戦後,ヨーロッパ諸国に復興のための資金を貸していました。貸し手であるアメリカが不景気に陥ったことで,借り手であったヨーロッパ諸国などにも大きな影響が及びました。また,アメリカと貿易を行っていた日本などの資本主義国も影響を受けました。
■アメリカの対応
アメリカではルーズベルト大統領が「ニューディール(新規まき直し)政策」を打ち出し,政府が行うダム建設などの公共事業で失業者を雇うことにより,経済を安定させました。
農業の面でも,政府が農産物を買い取るなどの政策を行いました。
また,労働者の権利の保護なども行い,国民の生活も安定しました。
[参考]ほかの国のとった政策も確認しておきましょう。
[イギリス・フランス]
イギリス・フランスは,自国と植民地との貿易を強化して,他国との貿易には高い関税をかけて締め出す「ブロック経済」政策を行うことにより,経済を安定させました。
[ソ連]
ソ連では社会主義国化が進められ,国が計画を立てて農業生産や工業生産をする計画経済が行われていたため,世界恐慌の影響をあまり受けませんでした。
[ドイツ・イタリア]
有力な植民地を持たないドイツ・イタリアでは,不景気による社会不安を利用して独裁者が現れ,軍事力で反対派をおさえつけて,反民主主義・反自由主義をかかげた全体主義の政治(ファシズム)を行い,他国を侵略して経済を安定させようとしました。
ドイツ…ヒトラー率いるナチスが独裁政治を行い,東ヨーロッパなどを侵略
イタリア…ムッソリーニ率いるファシスト党が独裁政治を行い,エチオピアを併合
[日本]
日本も,新たな資源を求めて満州へ進出し,経済を安定させようとしました。
世界恐慌への対策として軍事力で他国を侵略していったドイツ・イタリア・日本は,やがて国際社会で孤立していきました。そして,その後,世界戦争(第二次世界大戦)へと発展しました。